展示のご紹介(展覽緣起)

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流浪の女性文化人、非凡な知識人、グルメな孫悟空、都市のストーリーテラー……。台湾における「韓良露」という名前は、「博識多彩な文化ブランド」です。彼女は、美食を楽しみ、旅を愛し、占星術やあらゆる出来事を研究し、独自の目線で日常生活と都市空間を解釈することを得意としていました。

その文才は、16歳の時に早くも開花し、現代詩から創作の道を歩み始め、その筆を映画批評、随筆、脚本等へと広げましたが、常に「ペンをとって文字を書く物書き」の立ち位置を守っていました。

2020年は、韓良露がこの世を去ってから5年目に当たります。彼女は今なお小さなバルコニーを開放し、天界から人世と対話を繰り広げながら、熱気のある「大観園」を作り上げていることでしょう。

彼女が愛した時代(她愛過的那個時代)

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1970年代、台湾は、次第に開放へと向かい、文化と政治の啓蒙の火花が同時に立ちこめました。花のように煌く青春時代の韓良露は、授業を抜け出し、転校、流浪の旅の合間に、詩作や映画展の開催、小劇団への参加、実験映画の撮影、フェミニズムの提唱など様々に活動しました。街角、カフェ、喫茶店……、至る所に彼女の姿が見え隠れします。薔薇のような自由で美しい空気を吸い込み、時代の砂浜に名を残していきました。分野を超えたスラッシュ族(様々な肩書を持つ人)の先駆者であり、文芸青年や怒れる若者の集合体でもあります。

図説1:若き日の韓良露、朱全斌提供。1974年夏、18歳の韓良露(一番右)と友人の朱俊哲(一番左)、林蒼鬱(左から二番目)が、台中の東海花園にベテラン作家の楊逵(中央)を訪問しました。その際、当時、楊逵を研究していた文学者の林瑞明(右から2番目)も含めて撮影した集合写真です。

図説2:『唐麦克林以及我的青春時光(ドン・マクリーンと私の青春時代)』直筆原稿、朱全斌提供。青春時代の韓良露が退屈な日々の中、先輩の家に入り浸って聴きいった、アメリカのフォーク歌手、ドン・マクリーンのレコード『アメリカンパイ』。この曲こそ彼女の魂の歌であり、永遠の時代の歌であると感じていました。2008年『聯合報』にて発表、後に『文化小露台(文化の小さなバルコニー)』に収録。

図説3:中国語テレビドラマ『他們的故事(彼らの物語)』の第1話脚本、活字冊子、朱全斌提供。韓良露は、父親の借金返済のため、二足の草鞋を履いてテレビドラマの脚本も担当。100本以上の脚本を生み出し、名声と富を築き上げました。

都市文化の魔法使い(城市文化魔術師)

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韓良露の専門は、「都市のコレクション」です。繊細で綿密な文明ネットワークの中で、多様なグループ、歴史の経験、文化の記憶が、都市の時間の軌跡をいかに留め、人々を魅了する活力にあふれているか考察し続けました。

2006年夏、台北の南の小さなバルコニーがある古い建物に「南村落」を創り上げました。「都市のストーリーテラー」として、まちの隅々に至るまでこの都市の様相と土地に対する韓良露の愛と考察を私達に見せてくれます。

図説1:『城市的文学散歩(都市の文学散歩)』直筆原稿、朱全斌提供。旅行の魅力にとりつかれた韓良露は、「パリ」「ベニス」「京都」「ロンドン」の4都市について、「文学ガイド」と「旅人ガイド」をキーワードとした文学を通じて都市の内在世界に入りこめると考えました。

図説2:『巷弄美学(小路地美学)』直筆原稿、朱全斌提供。韓良露は、成熟した文明的な都市では、何気ない路地の中から生活美学が生まれると考えました。『小巷小弄天地寬歲月長—南村店誌(小路地の広き世界と長き歳月―南村店誌)』という作品名で、『INK刻印文学生活誌』47期に発表、2007年に出版されました。

図説3:『南村落vol.1』新聞、朱全斌提供
師範大学付近の繁華街で出会う散策ルートや特色ある店、地元アーティストを紹介し、文化や歴史、グルメ、土地の発展の流れを見せてくれます。2007年創刊、全2期。

星空と魂の対話(星空與靈魂的對話)

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遠い神秘的な星空には、一体どのような魂の暗号が煌めいているのでしょう。1992年、韓良露は、滞在先のロンドンで占星術コースを修了し、「占星術」とは、迷信でも宿命でもなく、世界と人生を読むための道具だと知りました。星の運行の神秘を通して、人間が出会い分かれる問題や様々な生命を貫く試練を知り、自分という小さな世界と大きな宇宙の関係を洞察することができるのです。

図説1:『什麼是Relocation Chart地運換置星圖?(ホロスコープチャートとは何か?)』直筆原稿、朱全斌提供。このホロスコープチャートは、経度、緯度と時差の変化に伴って新しい星図を生み出すもので、出会う人々、事件、生命のシーンが異なりながら現れます。PChome「韓良露占星報」欄にて発表。

図説2:『読「命運交織的城堡」:看卡爾維諾怎麼玩塔羅牌?(『「運命の織り成す城」を読む:カルヴィーノはどのようにタロットを操ったか?)』)直筆原稿、朱全斌提供。カルヴィーノはタロットカードマニアで、タロットを使って多くの人の運命を占いました。人類全体の運命までタロットの原型に戻し、人類全体の無意識から構成されるタロットカードの絵となりました。1999年『中国時報』書評ページにて発表。

図説3:『Transits of the year 1997 for Liang-Lou Han,born 19 Nov 1958』印刷品、朱全斌提供。韓良露の1997年の星運図。ひとりひとりの生まれた時間や場所によって、それぞれに対応する星、星座、アスペクトとサインがあり、毎年異なる星の運行に従って運勢の起伏が生まれます。彼女は、占星を学ぶ過程で、毎年自分の干支でこのような星運図を作成しています。

美味しさを楽しむ日々(品味生活小日子)

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韓良露は、料理に長けた父親と祖母とともに市場に通っていたことで、豊富な味覚を持つ幼少期を送っただけでなく、そのグルメな舌も啓発され、彼女の旅するグルメ人生が出来上がりました。

33歳で旅を仕事とするプロ旅人となり、世界各地を巡りながら異国のグルメや美酒を味わい、現地の風土文化を観察した彼女は、奥深い生命感とエネルギーに溢れていました。スローライフ、スローフード、スローウォーキングを貫き、すべてにおいて生活の味わいを感じ、創作のために力を蓄えました。

図説1:『潤餅是一條文化的船(潤餅は文化の船)』直筆原稿、朱全斌提供。潤餅(野菜の薄皮巻き)は、中国の古代中原に起源を持ち、閩南地方から海を漂いさまよった船の如く、シンガポールやフィリピン、インドネシアを通って台湾にて開花しました。2012年、第6回『春の潤餅文化フェスティバル』のイベント冊子に収録。

図説2:「金鼎賞」トロフィー、朱全斌提供。2015年4月、すでに故人となった韓良露は、『良露家之味(良露家の味)』で第39回金鼎賞の図書・出版賞、非文学図書賞を受賞。書物全体を通して知性とセンスが交わり、食べ物を通じて人や物を懐かしみ、過去の美しき歳月を追想しました。

図説3:『神秘心世界──生命釀酒的秘密(神秘的な精神世界--命の酒の醸造の秘密)』直筆原稿、朱全斌提供。韓良露は、酒の醸造の秘密は時間にあり、まさに時の魔法であると考えました。酒をこよなく愛する彼女は、『微醺:品酒的美學與生活(ほろ酔い:酒を味わう美学と生活)』『微醺之恋─旅人與酒的相遇(ほろ酔いの恋―旅人と酒の遭遇)』『小飲・良露(ちょい飲み・良露)』『一起,微醺(一緒に、ほろ酔い)』など多くの関連作品を生み出しました。

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