展示内容について(展出緣起)

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大河小説は掌編、短編、中編、長編小説以外のジャンルです。その語源はフランス語で「連続した長編小説」または「小説シリーズ」を意味する「Roman-Fleuve」に由来し、物語は非常に長く、通常は「三部曲(三部作)」で構成されています。

葉石涛が台湾で初めて「大河小説」を発表し、鍾肇政の『濁流三部曲』や『台湾人三部曲』などの作品でその基礎が次第に形成されていきました。その後、李喬の『寒夜三部曲』や東方白の『浪淘沙』などに受け継がれ、21世紀以降は邱家洪が『台湾大風雲』を発表するなど、「大河小説」は台湾文学における印象的なシンボルとなっています。

台湾の大河小説は歴史的文脈の中で進化し、台湾本土の特徴や主体性を追求した時代の意義が示されています。このたび、この特殊なジャンルと当館の豊富な収蔵品をより多くの人々に紹介するため、「わき上がる優しさ──台湾大河小説寄贈品展」を特別に企画しました。ゆったりと流れる歴史の河の中で「不参加を余儀なくされた」台湾と台湾人の姿をはっきりと浮かび上がらせることを目指しています。

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図説1 ~ 3:展示会の実際の様子。

図説4 & 5:AR写真。

芽生え:大河の源流を探る(萌芽:探勘大河源頭)

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1940年代から1980年代、大きな声で「台湾」と言えなかった台湾人は、どのように自分の物語を伝えたのでしょうか?このエリアでは、呉濁流の『孤帆三部曲』、葉歩月の『七色之心』、鍾肇政の『濁流三部曲』や『台湾人三部曲』など、台湾における初期の大河小説を展示しています。

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図説1:展示会の実際の様子。

図説2:鍾肇政『流雲』。台北:文壇社、1965年。植民地統治から脱却して間もない戦後初期の台湾が舞台となっており、故郷に帰った陸志龍が直面した新たな生活を通し、台湾人の心に深く根付く日本の軍国主義を排除し、中国の文化、生活、言語に適応していく過程が描かれています。

図説3:呉濁流『アジアの孤児』。訳:伝恩栄、台北:南華出版社、1962年。

図説4:葉歩月『七色の心1』手稿。『七色の心』は1958年から1960年代に日本語で書かれました。全12巻、1017ページ。物語は戦前と戦後(1913年~1959年)にまたがり、未亡人の林秋卿の4世代にわたる家族の成長が描かれています。台湾における戦後初の家族史小説であり、一部の有識者はその規模から大河小説として位置づけています。

継承:土地に流れた涙の跡(承繼:流淌在土地的淚痕)

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1980年から2000年にかけ、社会の殺伐とした雰囲気が落ち着き、戒厳令が解除され、台湾本土化運動が始まると、作家たちは文字により権威主義の象徴や秩序を解体し、これまでの主流な歴史的物語の隙間を埋め始めました。このエリアでは、李喬の『寒夜三部曲』、東方白の『浪淘沙』、姚嘉文の『台湾七色記』、陳燁の『泥河』などを展示しています。

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図説1:展示会の実際の様子。

図説2:東方白『浪淘沙』手稿。東方白が1979年に執筆を開始した『浪淘沙』は1989年に完成しました。130万字以上で全1667ページにおよび、作者はうつ病に悩まされ、執筆を中断することもありました。1895年の日本軍による台湾征服戦争から現代までの100年間にわたる物語が描かれており、舞台は東アジア、東南アジアに渡っています。主人公の丘雅信、江東蘭、周明徳はそれぞれ実在した歴史上の人物です(台湾初の女医:蔡阿信、旧新竹中学校の校長:張棟蘭、成功中学校の教師:陳銘徳)。カナダで彼らと出会い、同意を得たうえで、3家族の物語を大河小説に織り込みました。

図説3:『台湾七色記』新聞連載。

図説4:李喬『寒夜三部曲第一部:寒夜(一)』手稿。当館が所蔵する『寒夜』手稿は全3巻、226ページで、李喬の最初の長編小説でもあります。農民によるかつての開墾の苦労や日本に統治された台湾の武力抵抗の過程などが描かれています。全編にわたり土地への愛着が表現されています。

新しい声:曲がりくねりながら力強く立ち昇るリボン(新聲:一條蜿蜒奔騰的緞帶)

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新世紀の大河小説は、かつての作家が関心を寄せていたテーマを掘り下げるとともに、台湾人の当事者意識の系譜を追求し、台湾人のアイデンティティの構築に関わっています。このエリアでは、黄娟の『楊梅三部曲』、邱家洪の『台湾大風雲』、施叔青の『台湾三部曲』、鍾文音の『島嶼百年物語三部曲』、陳耀昌の『台湾史花シリーズ三部曲』など、21世紀に出版された大河小説を展示しています。

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図説1:展示会の実際の様子。

図説2:『大河小説についての知識』インタラクティブエリア
台湾で最初の大河小説はどれでしょうか?文字数が最も多い大河小説はどれでしょうか?Q&Aゲームでクイズの石を投げ、水しぶきの中から一緒に長い文学の河を振り返り、大河小説についての知識を確認しましょう。

図説3:邱家洪『台湾大風雲 第1巻 二戦浩劫(第二次世界大戦の惨禍)』手稿。『台湾大風雲』は5巻に分かれていますが、章は順番になっており、手稿は全55章4865ページからなります。第1巻『第二次世界大戦の惨禍』:第1章「締縄と黒糖」~第15章「衝突」。第2巻『失落した帝国』(出版時は『消失した帝国』に変更):第16章「出棺と嫁入り」~第26章「神風特攻隊」。第3巻『二二八の恐怖』:第27章「王朝の交替」~第35章「恐怖の年代」。第4巻『民主の怒り』:第36章「祖国への別れ」~第43章「胭脂虎」。第5巻『台湾風雷』:第44章「有情世界」~第55章「舞台」。

図説4:施叔青〈『行過洛津』──台湾三部曲の第一部〉手稿。『行過洛津』は『台湾三部曲』の第一部で、2000年から構想されました。物語は故郷の鹿港(旧洛津)から始まり、泉州の七子劇団で旦角(女形)を演じた許情の半生を通じ、嘉慶(1796年~1820年)、道光(1821年~1850年)、咸豊(1851年~1861年)など、異なる時代における洛津の繁栄から衰退までの歴史が描かれています。近代の台湾や中国、世界の変化を理解し、具体的なイメージを描くことができます。

千の山を越えてなお滔々と流れる川(千山之外,河水依舊潺潺)

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ここでは、鍾肇政の『挿天山之歌』、東方白の『浪淘沙』、李喬の『情帰大地』、陳耀昌の『傀儡花』をアレンジしたビデオを上映しています。作中のシーンをリアルに追体験し、作家と一緒に広大で果てしない文学の河を進みましょう。

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図説1、2:展示会の実際の様子。

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